先進国においてエコで経済的である電気自動車(EV)の需要が高まっている。去年(2018年)ウクライナはEVの販売増加で世界のトップ10に入った。しかし、人々が電気自動車を一般的に使えるようになるためには、充電スタンド等のインフラ整備を発達させなければならない。セルヒー・ヴェリチェウさんと「EcoFactor」というチームはガレージからスタートし、ハブを設立し、数世代の充電スタンドを開発し、レース使用に改造したZAZ-966でテスラに勝利し、オートパイロットの電動トラクターを造るという夢を持っている。そして充電スタンド用部品がモルダワンカというオデサ市の地域で製造されている。
EcoFactor社のオデサの熱心なエンジニアたちは電気自動車を普及させており、そしてそのようなエコロジーな交通機関を造り出すための準備を行っている。EcoFactor社は電気自動車と充電スタンドを設計している。EcoFactorの創設者であるセルヒーさんによれば、オデサではトラックが空気を汚染していて、この問題を解決するには全ての大型車を都市から追い出し、内燃機関を持つ自動車が街の中心を走ることを禁止する必要があるという。
EcoFactor
「うちのチームは、できるだけ多くの人が電気自動車で移動することが出来るようなエコロジーな方向に人々を動かしたいと考えていいます。しかしそのためにインフラ整備やスタッフが必要となります。電気自動車とは何なのか・どのように使うのか・電気自動車の長所とは何かということを教えるのが私たちの目的です。」
2015年に開催された電気自動車・ハイブリッド車による耐久レース・キーウ~モンテカルロ2015において、EcoFactorのチームが世間から注目を浴びた。そのラリーのある区間においてレース使用の電気自動車化されたZAZ-966がテスラに勝った。レース使用のZAZ Electroは3.5千キロメートルを走り、一回の充電で500キロを走破した。チームは10ヵ国を走破し、全体のランキングでは5位に入り、改造車部門のランキングでは2位となった。
「レース使用のザポロージェツ(ZAZ-966の愛称)は、電気自動車がもはや現実のものであることを見せるためのものでした。どうしてZAZ-966を選んだかと言われれば、ウクライナは革新的であることを見せたかったからです。見た目は古いけれども中身は全く新しく革新的なものになりました。その目標は100%達成できました。」
ZAZ-966とは
ZAZ-966とは、1966年∼1974年に製造していたザポリージャ自動車工場製小型車。 *ザポリージャ州:ウクライナ南東部に位置する州2016年にEcoFactorのチームはSynchronousというウクライナ製電気コンセプトカーの設計に参加した。プロトタイプはウクライナで設計・組み立てが行われ、モナコでの国際会議「EVER2016」で紹介された。その自動車はレトロフューチャーなデザインで作られた。EcoFactorのチームによると、この車はホテルのシャトルバスやタクシー、ツアーカーとして使用できるという。
電気自動車の進化
エンジンのなかで最も普及しているものは、内燃機関と電動機である。内燃機関は燃料の化学エネルギーを使い、電動機は電気を使う。
電動機は現代的なものだとよく思われているが、実際は以前にも電動機の実験は行われていた。電気自動車を造る最初の試みは19世紀半までに遡る。
電気自動車の最初のモデルは内燃機関より前に発明された。1828年にイェドリク・アーニョシュ・イシュトヴァーンというハンガリー出身の発明家が電気自動車を造ったという説がある。やがて1864年にドイツ出身でオーストリアの発明家であるジークフリート・マルクスが、初めてガソリンを使用した内燃機関の車両を発明した。
1880年代から電気自動車の開発が速く進んだ。しかし20世紀になるとピストン機関型内燃機関の構造が改善され、石油市場の状況も変わった。その時から内燃機関を持つ自動車が市場を席巻するようになった。1970年代に起きたオイルショック・天然資源の枯渇に対する認識・自然災害の可能性等により、エコである電気自動車の開発に再び注目が集まった。
現代の電気自動車は電気で充電している特殊なバッテリーによって動く。このような乗り物は運転しやすく・静かで・エコで・メンテナンスコストが比較的安い。燃料の質に依存せず、安いエネルギーを使っている唯一の乗り物だ。
このような長所および内燃機関の使用のリスクを考慮し、ヨーロッパ諸国がよりエコである乗り物へと乗り換えることを呼び掛けている。ディーゼル車及びガソリン車を規制しており、いずれは内燃機関を持つ自動車の販売や使用を禁止する予定の国もある。
メーカーもハイブリッド車や電気自動車を製造するようになっている。ポルシェとボルボはすでにディーゼル車の生産を止めた。
電気自動車は100%エコであるということは間違いであると指摘されている。というのは、充電用エネルギーは石炭やガスを燃やすことによって発生しているからだ。エネルギー資源の中では、再生可能エネルギーの割合がまだ小さい。最近、電動機と内燃機関に関する環境への影響について世界でよく研究されている。例を挙げると、2017年にTransport & Environmentというベルギーの研究所が、石炭火力発電所のエネルギーを使用したとしても電気自動車は内燃機関より環境に優しいということを証明した。
ウクライナの産業は電気自動車用充電スタンドの開発に積極的に取り組んでいる。GreenFuel・Octa Energy・OnCharge・Elmizというウクライナの会社はウクライナの消費者向け外国製充電スタンドだけでなく、競争力があり低コストな国産の充電スタンドも提供している。またガソリンスタンドでも充電スタンドが積極的に取り入れられている。例えば、UGVchargers・TOKA・GoTo-Uなどのネットワークが挙げられる。
EcoFactor Hubと製造
電気自動車を普及させるためには、まず発達した充電スポットのインフラ整備が必要だ。EcoFactor ChargeはEcoFactorの最新充電スタンドを開発するプロジェクトである。
2019年現在、EcoFactorのチームは、2種類の充電スタンドを開発し生産している。それは自宅と外の両方で使用できる携帯型充電スタンドと、屋外に設置される固定型充電スタンドだ。
セルヒーさんは充電スタンドの市場の変化は速いと語った。2016年からEcoFactorのエンジニアはAC型の充電スタンドを三世代にわたり開発した。第一世代の充電スタンドはインターネットに接続できず、一台しか充電できなかった。第二世代の充電スタンドもインターネットに接続できなかったが、RFIDカードの登場によりユーザーが10人まで充電器に接続できた。
第三世代の充電スタンドは、RFIDカードまたはNFCカードを通じてインターネットに接続できる。ユーザーはサーバーに接続してから、充電プロセスをリモートでコントロールできる。この充電スタンドは市場の需要に最も適応しているので、EcoFactorがそれを生産し販売している。
RFIDとNFСカード
RFIDカードとは、無線周波数識別システム付きの非接触プラスチックカードである。NFCカードは、Near Field Communication無線通信技術を使用する非接触カードである。電気自動車用充電スタンドは統一されたものではなく、種類と使用基準によって分かれている。EcoFactorは、ウクライナで初めてCHAdeMOという急速充電スタンドを開発している。EcoFactor Chargeは、人気モデルである日産リーフという電気自動車を30分でほぼ完全に充電できる充電スタンドの販売前テストを完了した。開発基準が色々ある中で、EcoFactorは市場の変化に迅速に対応できると、セルヒーさんは言う。
CHAdeMO
日産・三菱・トヨタ・スバルの自動車が扱うCHAdeMOという日本協会の基準。「充電スタンドの電源部分をゼロから開発したことが私たちの誇りです。次の日に基準が変わっても、私たちは充電ケーブルを変えればいいだけなのです。うちのチームの開発は非常に柔軟性があり、大企業より活発です。」
2018年9月にオデサのプリモールシカ通りにおいてEcoFactor Hubがオープンした。エコな乗り物が欲しい人に対して、電気自動車を選ぶことに関する相談や、ヨーロッパとアメリカからのデリバリー、また税関サポートのサービスを提供している。電気自動車を既に持っている人は、EcoFactor Hubで車両診断や修理サービスを受けることができ、また必要なスペアパーツを選択して交換もできる。プロジェクトの創設者でもあるセルヒーさんによると、このハブの目的はビジネスのみならず、電気自動車コミュニティを作り出すことでもあるという。
「ハブは、オデサにとって非常に重要な所である港の玄関口にあります。毎日多くの観光客が訪れる所なので、そこにハブを開きました。オデサが将来のこと・子供たちのこと・環境のことについて配慮している所だということを示したかったのです。」
電気自動車のバッテリーはよく夜中に充電されているため、電気自動車の普及はエネルギーの平準化について解決するための糸口の一つになり得る。現在はほとんどの発電所が絶え間なく1日中に均等なエネルギーを生成している一方で、電力システムの負荷が朝と夕方に最大で、夜間に最も低くなるので、電気自動車の普及によりエネルギーの平準化ができるようになる。
「ウクライナはエネルギーに依存しています。しかしウクライナ人は、エネルギーに依存したくないのです。そのような独立性や自由を愛することがウクライナ人の血のなかに流れているからだと思います。電気自動車はエネルギーに依存しないことへの第一歩だと思います。」
セルヒーさんと彼の大きな夢
大学で金融について学んだセルヒーさんは、多くの勤務経験があり何回か起業もした。銀行で短い間仕事をした経験のほか、地域のセールスマネージャーの経験や、パソコン店や建設会社を所有していたこともあった。同時に、セルヒーさんは昔から乗り物と機械に興味があった。
「子どもの時から機械が好きでした。小4~5の時、オートバイをプレゼントとして貰いました。私はそのオートバイを組み立て修理し、売ってまた新しいのを買いました。高2の時には、ソ連時代のとても速いオートバイであるJawa 350というオートバイを持っていました。やがて『オートバイをやめて自動車にしよう』と父が言ったのです。小さい頃からずっと機械に惹かれて、何かを作ったり修理したりしてきました。」
ソ連崩壊後私有化が始まった頃に、セルヒーさんの祖父はオデサ地域において最初の農場所有者のなかの一人となり、1991年に自分の農場を開いた。その農場をセルヒーさんの父が継承した。セルヒーさんもいつかは農家になるものと思っているが、農場に最新技術を使いたいのだ。
「オートパイロットのトラクターを持っている農家になりたいと思っています。空から農場をモニターし、センサーによってすべてをコントロールすることを考えています。それが可能であることが分かりました。そのような技術は既にあるので、あとはそれらを組み合わせれば準備万端です。電動トラクターの作り方を考え始めたましたが、コスト面や技術面で課題があることが分かりました。まずは、オートバイや電気自動車のような造りやすいものから経験を得ることが必要なのです。」
セルヒーさんと EcoFactorチームの大きな夢は、農家に役立つオートパイロットの電動トラクターを造ることだ。エンジニアによると、トラクターの所有者は燃料補給について時間を浪費せず、自宅でトラクターを充電できるという。2015年にEcoFactorはTractor Electro2.0を発表した。ハルキウのトラクター工場のあるモデルを参考に、1回の充電で最大8時間稼働可能な電動トラクターを製造した。大量生産の場合には、あのトラクターはより簡単なメカニズムと高い効率性能を持つだろう、とセルヒーさんは語った。
「村の仕事を全て行える高品質のウクライナ製トラクターを造ることが出来る、という希望を持っています。またそれはバッテリーで充電されます。バッテリー用のエネルギーは、太陽光や風力などの全部再生可能エネルギー資源から賄われます。つまり石油や他の資源に依存しないということです。電気はエネルギーの独立性を与える手段なのです。」
支援について
このプロジェクトは、ウクライナ・インスティテュートのサポートにより実現されました。