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2018年からマリウポリにおいて現代芸術の大規模なフェスティバルであるStartUp ГогольFest(スタートアップ・ゴーゴリフェスト)が行われている。毎年春に、ウクライナの各州から人々はこのイベントに参加する。ボフダン・ヤレムチュクとデニス・ウホルチュクは、イベントの参加者をマリウポリまで連れていくアート電車を製作したことで、芸術・協力・対話のスペースを広げた。主催者達はインフラ省の支援を受け、8両の車両にテーマに沿ったイラストを描いた。ゴーゴリトレインは文化交流プロジェクトと呼ばれていて、どんな場所でも人々が文化的なイベントを簡単に訪れるようにすることを目的としている。

ゴーゴリトレインはヨーロッパにおける最初のアート電車である。1970年にカナダで、世界で最初のアート電車が導入された。当時、Grateful Dead、Janis Joplin、The Band等のロックミュージシャンがトロント・ウィニペグ・カルガリーにてツアーを行った際にジャムセッションをしていた。そのイベントについて2003年に「フェスティバル・エクスプレス」というドキュメンタリー映画が公開された。

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ゴーゴリトレインプロジェクトはキーウ・モヒーラ・アカデミーの卒業生であり、芸術団体・コスモスキャンプの創設者であるボフダン・ヤレムチュクとデニス・ウホルチュクにより考案された。学生時代、デニスは車両の指定席を全席買い上げ、学生の間に切符を売り、一週間カルパティア山脈に一緒に旅行していた。

「学生時代、このような列車をロックンロールトレインと呼んでいて、二回程同じようなものが行われてました。特に多くの人がグループとなって協力し合うのを見るのは面白かったです。最初は多くの人がお互いをまだ知りませんが、2、3日後もう家族になった気分になれました。本当はみんなアクティブで面白いのだけれど、お互いに知り合えていない人達が繋がれる、社会の潤滑油のようでした。」

最初のスタートアップ・ゴーゴリフェストは2018年にマリウポリにおいて開催された。当時、キーウに住んでいる参加者のために2両の車両を電車に追加することについて「ウクライナ鉄道」と合意した。現在は芸術担当であるが当時は単なる乗客であったアンドリー・ヤンコフシキーはこう語る。

「多くの参加者にとって東ウクライナに初めて行く機会となったので、当時からこのアイデアは気に入っていた。東部に関する写真やビデオはとくにステレオタイプの入ったものなので、中央部に住んでいると東部がどんなところか、あまり想像できないのです。」

「実際の東ウクライナは想像と全く違いました。マリウポリは現代的で生活感に溢れた素敵な都市でした。ゴーゴリトレインに乗った人の中には、多くの活動家やジャーナリストがいて、現代の活発な若者が多くいました。」

2019年には、車両についてだけだったそのアイディアが、フェスティバル専用の電車をまるまる製作するにまで広がった。インフラ省と「ウクライナ鉄道」においてゴーゴリトレインのプロジェクトが発表され、インフラ省と「ウクライナ鉄道」も合意した。アンドリー・ヤンコフシキーは、そのプロジェクトがどんどん壮大なものになっていったと語る。

「1つの車両だけでも既に凄くて、2両の車両もとても凄いのだが、まるまる電車というのは本当に凄い。特に、それは電車に連結している車両ということではなく、電車まるまる一台でマリウポリにてプロジェクトを行うというのだから、驚きです。」

「そこで、プロジェクトをもっと発展させるため、電車を塗装することや、車両内でライブを行うことなど様々なアイディアを『ウクライナ鉄道』に発表しました。無事、『いいですよ、問題ありません』という返事を貰いました。実際に問題が少し出てきましたが、プロジェクトは成功しました。」

ゴーゴリトレインの主催者達は、インフラ省で行われた発表が簡単に進んだことを思い出している。確かに課題や縦割り的な問題はあったものの、当局は柔軟に対応してくれたという。

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「それは対話でした。コネや賄賂、暴力に頼ることなく、代わりに話し合いを行うことで絶対に成功に終わると強く思います。クレイジーなアイディアを説明したとしても、『いいよ、やってみよう』という返事を貰えます。が、やがて書類の提出やサインの収得、打合せ等の多くの手続きが必要となります。私達がぶつかった主な障害はコミュニケーションだったと思います。詳しく言うと、誰かが何かを知らなくて、上司からの許可や説明を待つことなのです。『ウクライナ鉄道』の上司と一緒に車両を見に行った時、車掌が『上司から許可を貰わない限り電車を塗ることができません』と反対しました。『ウクライナ鉄道』はとても大きい会社ですので、会社がプロジェクトを支持したくても、官僚主義が進んでいますから、会社全体に情報を浸透させるのが難しいのです。」

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2019年4月26日にゴーゴリトレインはヴィンニツァ・キーウ・ドニプロ・マリウポリのツアーを行った。元々はキーウが出発点であったが、他の都市から需要があったので、コース拡大した。画家、ミュージシャン、俳優、監督、記者、フェストの主催者等、アート電車には300人以上の乗客が集まった。

「5日間、赤の他人が塗装したマリウポリ行きの電車で行われるゴーゴリフェストに何百人もの人達が集まる、これはとても面白いことだと思います。一日中閉ざされた空間にみんないたら、とてもいい相互関係が生まれると思うので、主催者である私たちがその過程を見たいです。そのシナジーが、想像も出来ないような素晴らしいアイディアを生み出せると思います。」

アート電車・ゴーゴリトレインとは、全課程をコントロールする6人のチームからなっている社会的プロジェクトである。ディレクターであるステパン・クリーナはアート電車やマリウポリの滞在、フェスティバルについてドキュメンタリー映画を撮影している。現代的なウクライナ文化を紹介する映画として国際映画祭でこの映画を公開したいと考えている。

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ゴーゴリトレインのクリエイティブディレクターであるデニスは、対話を必要としている社会がこの国にあることを見せることが、このプロジェクトの目的だと主張している。政府機関と一緒にプロジェクトを行う際、政府機関が社会にサービスを提供しているということを念頭に置く必要があるという。

「この事例で政府機関と共同のプロジェクトができることを見せたかったのです。インフラ省と『ウクライナ鉄道』の経営者たちは全てを理解してくれましたし、塗装した電車で現代芸術フェスティバルに旅するアイディアを評価してくれました。」

「ウクライナにはフェスティバルが多いです。しかし国が大きくて、電車が一時間毎に来ないので、遠いところで行われるフェスティバルまで行くのは簡単ではありません。」

ゴーゴリトレインにはいくつかのルールが作られている。まず、プラスチックの使い捨て皿やレジ袋をできるだけ使わないこと。次に、アート電車が全席禁煙となっている。

この電車以外に、マリウポリでは、スタートアップ・ゴーゴリフェストの参加者用に臨時バスが通っている。デニスは、何ヶ月かに渡り文化交流について考えた結果、インフラ部門とどのように協力し合うか、他の文化的なイベントに対して自分の例で見せたかったと述べている。フェスティバルのために他の都市に行く人にとって交通問題が障害となるべきでない、主催者達は考える。

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「教育と同じくらい、文化は重要な課題です。自ら賄賂を渡さなければ、賄賂問題は起こらないのです。キーウ・モヒーラ・アカデミーでは、誰も賄賂を渡しません。賄賂文化がないからです。現在、ウクライナの文化は決まったサイクルで一年を過ごす様式になっています。季節限定のパフォーマンスがあって、その中には全く面白くないものもあります。それで、みんなは夜にどこかに行く代わりに家でテレビを見ています。こんなことから、テレビ業界では問題が発生しました。家で無料のコメディドラマが見られるなら、どうして出かける必要があるのでしょうか。単に人々はそのような様式になれていないのです。なので、電車に乗って5日間フェスティバルに行くことが大変と思う人も少なくないのです。」

著作権侵害が生じるため若手アーティストがあまり稼げない状況から、ウクライナにおける文化作品はもっと注目され支援を受けなければならないとデニスは考えている。なので、文化の発展事業に対し行政が支援した事例が特に重要となってくるという。

「ウクライナ文化の作品に対する需要は多いです。しかし、文化作品にお金を払う習慣がありません。ホホール(主にロシアで用いられているウクライナ人に対する民族的蔑称。ウクライナコサックの独特な髪型であるオセレーデツィに由来する)に関する廃れた冗談をいっている番組に釘付けになれるなら、なんで文化的なイベントや作品にお金を払わないといけないのかという考えが出てきています。なので、市役所が文化予算を見直した例はとても素晴らしいです。市役所は、誰も使わない建物に数百万フリヴニャの暖房費ががかかることに気づき、その代わりゴーゴリフェストを開催したらいいと考えました。自分の街で何か新しいことを行う時は、行政やインフラ部門に協力を仰いだ方がいいです。なぜなら、必要なものが揃っており、また、行政もそのプロジェクトに興味を持つ可能性が高いからです。私たちが電車を塗装していた頃、車庫で働いている人はみんな展覧会に行くようにその電車を見に来ました。皆プロジェクトが大好きになりました。」

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合法的に塗装された電車

招待されたア―ティストたちは10両の車両の内8両を塗装した。アーティストは、オンラインで招待することもあれば、直接個人的に招待することもあった。壁画家、ストリートアーティスト、書道家、イラストレーター、タトゥーアーティスト等が招待された。各車両の塗装では、一つの車両につき複数のアーティストが取り掛かったとアンドリー・ヤンコフシキーは語る。約40人が力を合わせアート電車を完成させ、その中には「ウクライナ鉄道」のコーディネーターやボランティア、社員も参加していた。

「フェスティバル以降、それぞれの車両がバラバラになって、他の電車に連結されるので、電車全体での大きなテーマ作れないのです。なので、電車に一つの大きい絵ではなく、車両ごとに一つ共通のテーマでリンクした異なるストーリーを表現することにしました。つまり、車両一つ一つに異なるストーリーが描かれているのです。アーティスト達はスケッチを作成し、それを車両へと描きました。こちらからは各車両ごとのテーマをアーティスト達に伝え、どの車両を描きたいかは彼らが自ら選びました。アーティスト達からスケッチを貰ってからそれについて話し合いました。変更があったものもあれば、いくつかのバリュエーションをアーティストが提案しその中から取捨選択したものもあったりと、プロセスはそれぞれ異なるものでした。」

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「車掌の内一人は、寝ている間に車両が誰かに塗られてしまったという事件について話しました。そして彼は居眠りで罰金を払わなければなりませんでした。しかしそんな彼は自ら『T』という文字を電車に描きながら、その話をしていました。」

ゴーゴリトレインのアートディレクターであるアンドリー・ヤンコフシキーは、参加者の中には、かつて「ウクライナ鉄道」の許可を得ずに電車を塗装した者もいると述べた。ゴーゴリトレインの特徴は、当局や車掌たちからの支援をもとに合法的に塗装しているという点である。

「違法に電車を塗装することと重い犯罪を比べることはできませんが、確かにそれは物損に当たります。この場合には、同じことをしながら、隠れることも見張りから逃げることもしなくていいですし、日中または深夜でも車両で仕事が出来、電気や水も使え、『ウクライナ鉄道』のサポートも受けられました。本当にユニークなケースだと思います。」

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アーティスト達は車両の塗装を2日で終える必要があった。車両は絶えず実際に使用されていたため、事前に受け取ることが出来なかった。このようなプロジェクトを担当するのは初めての経験だったと、アンドリー・ヤンコフシキーは語る。アーティストを探したり、レイアウトを承認したり、必要な色の塗料を探したりなど、アートディレクターは多くの課題を解決しなければならない。一方で、アンドリー・ヤンコフシキーはアーティスト達が夢中に描いているのを見て、手伝わずにはいられなかった。

「アーティスト達はここに朝8時に来て、夜11時までここに残ってます。全て間に合わせるため1日に1食しか食べていませんが、彼らはそれでいいのだと思います。私も、単にお金や名誉、ポートフォリオのためではなく、立って見ているだけではいられない程とても面白く密度の濃いアイディアのために頑張ることが楽しいです。何とかして助けてあげたいと思うのです。このプロジェクトはものすごいことだと思います。普通は、もしかしたら2日くらいで忘れられることかもしれませんが、このプロジェクトは一番大きいアートプロジェクトの一つだと思います。これぞまさに移動型ギャラリーです。この電車を歩く時、イーストサイドギャラリー(ベルリンの壁を利用した壁画ギャラリー)を歩く時より満足しています。」

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車両の内1両はアンドリー・ニコリニクによって塗られた。以前にタトゥーアーティストであったアンドリー・ニコリニクは今、芸術の他の部門に挑戦している。このプログラムはアンドリー・ニコリニクにとって初めての大規模な仕事だという。

「このような作品を作り上げることは、私にとってとても重要な機会となりました。時間が足りず、100%自分の仕事に満足していませんが、プロセス自体は好きでした。このプロジェクト自体と、それに参加している人達から刺激を受けました。いまでは電車もつまらないものではなくなりました。少なくとも1両は、人々に様々な感情を呼び起こすものになっているでしょう。」

ゴーゴリトレインの主催者達は、各車両に別々の名前とテーマを考え出した。共通の未来・パラレルな現実・対話・ウクライナの現代芸術・変化・多様性・旅行といった名前の車両がある。また、バーとステージのあるレストラン車があり、そこでバンドや詩人はパフォーマンスを披露することできる。主催者は乗客にも積極的な参加と自分の芸術をシェアするよう呼び掛けている。唯一塗装されていない車両は日常生活と呼ばれた。

「『日常生活』の車両によって描かれているのは、話されていないことや外に出さないこと、もしくは避けようとしていることですが、それは一方で普段から不満に思っていることや日常生活に存在していることです。ソ連時代からそんなことを見せないようにしていましたが、私達は、きちんと塗装された車両以外にも古く、傷つき、錆びれ、使い古された車両があるということも隠さず伝えていきたいと思っています。私達はこのプロジェクトがよりよく見られるために最新の車両を提供してもらったわけではなく、ごくごく一般的な車両を提供してもらいました。そして車両の中には、私達の塗装の下に何か残っているものもあります。そういったものに対して私達は目をつむるのではなく、受け入れてそれらと一緒に旅に出ることにしたのです。それが、私達が行っていることです。」

プリドニプロフシカ・リヴィウ・オデサ等、様々な場所から来た車両からゴーゴリトレインの車両は成り立った。スタートアップ・ゴーゴリフェストの後、塗装された車両は元の場所へと返され、元のルートを運行していった。アート電車を開催しているチームは、このようなカルチャーツアーに関するプロジェクトが、海外でも出来るだけ多くチャンスを掴めるよう努めている。デニスは、ゴーゴリトレインの製作者が、川の船舶や飛行機を使ったフェスティバルの開催を目指している、という。

「ウクライナにはとても壮大なドニプロ川がありますが、全く使用されてません。もちろん、河川輸送は河川の生態系に悪影響を及ぼしますが、これについてはいずれにしても研究しなければならないと思います。例えば、週末にキーウからドニプロやオデサまでのクルーズを開催するのも可能だと思います。また、チャーター機をレンタルしスペインのホテルを120人分を予約するプランについてここ2年程考えています。タクシーなら4人、車両ならば500人、電車ならば300人の人達と、という風に、人が多かったらできないことはありません。」

支援について

このプロジェクトは、ウクライナ・インスティテュートのサポートにより実現されました。

コンテンツ作成スタッフ

プロジェクト企画:

ボフダン・ロフヴィネンコ

企画:

ナタリヤ・ポネディロク

編集:

イェウヘーニヤ・サポジニコヴァ

プロデューサー:

オリハ・ショル

フォトグラファー:

セルヒー・コロヴァイニー

アルテーム・ハールキン

フォトグラファー,

写真編集:

オレクサンドル・ホメンコ

ムービーカメラマン:

パウロ・パシュコー

オレクシー・パンチェンコ

ムービーカメラマン,

監督:

ミコーラ・ノソーク

映像編集:

マリヤ・テレーブス

トランスクライバー:

マリーナ・リャビーキナ

翻訳:

アリナ・クヂナ

翻訳編集:

藤田 勝利

翻訳コーディネーター:

ソフィヤ・アンジェリューク