2月24日、ロシア連邦はウクライナへ全面侵略を開始しました。侵略の前でさえ、ロシア当局は自国の言論の自由を抑圧していましたが、戦争が始まると状況は悪化しました。外国の情報源は国家レベルでブロックされ、ロシアメディアはプロパガンダに従事しており、一方で独立したジャーナリズムは彼らにとって不都合であり危険なものとされています。情報分野で勝利することの重要性を認識しているロシア人は、真実を隠したり歪めたりすることからジャーナリストを物理的に破壊することまで、最も汚い方法を使って目標を達成することを躊躇いません。
メディア分野は情報戦の強力なツールです。他の国のジャーナリストのおかげで、ウクライナでの出来事について情報を得ています。ウクライナへの武器供給、ロシアに制裁を課すという各国の政治家の決定、ウクライナを支持する国々でのデモなど、これらはすべて、独立したメディアが戦争をどのように報道し、ロシアのプロパガンダにどのように抵抗しているか、によるものです。
ロシアが独立国家の侵略を世界に正当化するウクライナの非ナチ化と非軍事化に関するプロパガンダのスローガンに抵抗し、ロシアに情報分野で勝つ機会を与えていないないのは独立メディア(ウクライナと外国のもの両方)です。その結果、侵略国の軍隊は、意図的かつ体系的にジャーナリストを威嚇し、戦争に関する客観的な報道を妨害し、ロシアの戦争犯罪を記録した人々を排除しようとしています。
写真:ブレント・レノ
ジャーナリストは、国際人道法において特別な地位を持っていません。戦闘行為に直接参加しない人は民間人と見なされ、民間人への攻撃からの一般的な保護を享受します。現代の国際人道法の基本原則によれば、武力紛争地帯で活動するジャーナリストは、軍に認定された軍事記者と独立したジャーナリストの2つのカテゴリーに分類されます。前者と後者はどちらも民間人であり、戦争時の民間人の保護に関するジュネーブ条約によって保護されています。メディア関係者に対して犯罪を犯すことで、ロシアは国際法に違反しています。
メディアの代表者であることを示すために、ジャーナリストは通常、ベスト、ヘルメット、車にPRESSマークを使用しますが、今では危険な場合があります。なぜなら、ロシア軍は脅迫して奪うだけでなく、メディア関係者を殺害する可能性もあるからです。ロシアは、ジャーナリストの存在や、前線または一時的占領地域での戦闘行為の収録には関心がありません。別の国家の市民のパスポートも、メディア関係者を捕虜となることや拷問から守ることはできません。イギリス、チェコ、アメリカ、デンマーク、UAE、アイルランド、スイス、フランス、リトアニアなどの外国のメディア関係者に対してウクライナにいるロシア軍が犯罪を犯したことが確認されています。
写真:エフェレム・ルツチキー
ウクライナには、ロシア人が犯したジャーナリストに対する戦争犯罪を監視および記録している組織がいくつかあります。特に、マスメディア研究所、戦略的コミュニケーションおよび情報セキュリティセンター、国際PENクラブのウクライナ支部、などです。以上の団体は次の種類の犯罪に注意しています。
-ウクライナメディアの放送の切断
-メディアへのインターネットアクセスのブロック
-ウクライナのメディアサイトに対するハッキング攻撃
-テレビ塔への砲撃
-ジャーナリストへの脅迫
-迫害
-メディアの押収とそれに対する攻撃
-ジャーナリストへの砲撃
-押収と誘拐
-傷害を与える
-殺人
全面戦争が始まってから2か月の間に、マスメディア研究所により、243件のウクライナのメディアとジャーナリストに対してロシアが犯した犯罪が確認されています。そのモニタリングによると、7名のジャーナリストが職務中に殺害されました。
-テレビチャンネル「LIVE」のカメラマンであるエウヘン・サクンは、キーウのTVタワーに対するロシアのミサイル攻撃中に死亡しました。
-The New York Timesにも寄稿していたブレント・ルノーは、イルペンの検問所で撃たれて死亡しました。
-Fox Newsのカメラマンであるピエール・ザクジェウシキーは、キーウ州のホレンカ村での砲撃中に死亡しました。
-ウクライナのジャーナリストであるオレクサンドラ・クフシノヴァは、砲撃中にピエール・ザクジェウシキーとともに死亡しました。
-ロシアのThe Insiderとアレクセイ・ナワリヌイの反汚職財団のジャーナリストであるオクサナ・バウリナは、キーウの砲撃で死亡しました。
-ウクライナのフリーランスのフォトジャーナリストであるマキシム・レービンは、キーウ州のフタ・メジヒルシカ村の近くで殺害されているのが発見されました。
他の多くのジャーナリストは、自身のジャーナリストとしての職務中ではない時に、戦闘行為に参加している対象としてもしくはロシアの砲撃により死亡しました;
オレクサンドル・リトキン(「КNК Медіа」のジャーナリスト)、ディレルベク・シャキロウ(週刊情報コンテンツ「Навколо тебе」の市民ジャーナリスト)、ヴィクトル・ドゥダル(軍事ジャーナリスト)、ヴィクトル・デドウ(テレビチャンネル「Сігма」のカメラマン)、セルヒー・プシチェンコ、パウロ・リー(俳優、テレビチャンネル「Дом」の司会)、オレフ・ヤクーニン(ザポリッジャのサイトmisto.zp.uaの編集者)、リリヤ・フミャニコヴァ、ユーリ・オリイニク(「24 канал」のカメラマン)、セルヒー・ザイコウシキー(時事評論家、歴史家、翻訳家)、デニス・コテンコ(退役軍人省の報道機関の職員)、エウヘン・バリ(ジャーナリスト、ライター、ボランティア)、ロマン・ネジボレツ(チェルニヒウのチャンネル「Дитинець」のビデオエンジニア)、ゾレスラウ・ザモイシキー(フリーランスのジャーナリスト)、ヴィラ・ヒリチ(「Радіо Свобода」のジャーナリスト、プロデューサー)、オレクサンドル・マホウ(チャンネル「Дом」のジャーナリスト)
写真:ブレント・レノ
4月24日の時点で、少なくとも9名のジャーナリスト(Stefan Weichert、Emil Filtenborg、Stuart Ramsay、Guillaume Bricket、Marian Kushnir、Juan Diego Herrera Arredondo、Benjamin Golle、アンドリー・ツァプリエンコ、オレクサンドル・ナウロツキー)がロシアの占領者の砲撃で負傷しました。マスメディア研究所はまた、8件のジャーナリストの拉致・誘拐などを確認しています。メディア関係者のうち少なくとも10名が捕虜となり、15名が行方不明となっています。
ロシア軍はまた、ウクライナ全土における11のテレビ塔を砲撃しました。メリトポリ、キーウ、ヴィナリウカ、ハルキウ、イジューム、リヴネ、ヴィンニッツァ、コロステニ、リシチャンシク、ビロピッリャで、その結果、各地域で放送が部分的に途絶えました。さらに、占領者はウクライナのメディアを押収し、ロシアのチャンネルを放送しました。メディアに対するロシアの戦争犯罪は、ウクライナの16の地域で確認されています。それらのほとんどは、キーウとその周辺の町や村で、そして黒海沿岸地方とザポリッジャ地方および下ドニプロ地方の占領された集落で行われました。
マスメディア研究所は、ロシアのメールアドレスmail.ruからジャーナリストやメディアの電子メールアドレスに送信された脅迫を多数確認しました。このような文書を、「Європейська правда」、「Главком」、「Апостроф」、「Крим.Реалії」およびヴォリーニとザポリッジャの多くのメディアが受け取っています。
国際通信社であるAP通信のジャーナリストの実例があります。ビデオジャーナリストのムスティスラウ・チェルノウと写真家のエウヘン・マロリェトカは、マリウポリでの出来事を報道した最後のメディア関係者になりました。彼らがロシア連邦の戦争犯罪を記録したことで、ロシアの占領者は彼らを迫害し、彼らに対する実際の狩りを宣言しました。
写真:ムスティスラウ・チェルノウ
しかし、彼らはウクライナ軍のおかげでなんとか街を離れることができました。警察の広報係は、ウクライナの兵士がムスティスラウとエウヘンを救うために自分たちの命と民間人の命を危険にさらした理由を記者団に語りました。
「彼らが捕まれば、ロシア兵は彼らを撮影し、撮影してきたものはすべて嘘だと言わされます。それまでのすべての努力とマリウポリで行ってきたすべてのことが無駄になります。」
現在、マリウポリには独立したジャーナリストはいません。
写真:カテリーナ・モスカリュク
3月31日、死亡したジャーナリストを追悼するため、「Call the War а War:2022年2月24日以降のウクライナにおけるメディアに対するロシアの犯罪」という展覧会がリヴィウで開かれました。このプロジェクトは、ロシアによるウクライナへの全面戦争の影響を受けたジャーナリストの物語であり、国際ジャーナリストコミュニティに、戦争を「危機」「紛争」「軍事作戦」ではなく戦争と呼ぶよう呼びかけています。イベントの主催者が強調しているように、ロシアが侵略者であるということを、世界は認識しなければなりません。
5月3日、世界報道自由デーに、ウクライナの全国ジャーナリスト連合は、死亡したジャーナリストを追悼する基金の設立を発表しました。ウクライナと海外の両方からの組織や個人による連合の特別口座へのすべての慈善寄付は、ロシアの侵略により死亡したメディア関係者の人々の家族に提供されます。