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ロシアは、軍事力によって占領できないウクライナの都市に対する化学兵器の使用について公言しました。このような発生可能なシナリオの前触れは、すでに3月末の時点で起きています。有識者の情報によると、ロシア軍は化学兵器による中毒の解毒剤を入手したのです。化学兵器の使用は戦争犯罪であり、ロシアも署名している化学兵器禁止条約への違反となります。

残念なことに、適切な資格や専門知識がなければ、化学兵器の使用の事実を自ら特定、確認することは困難な場合があります。そのため、公式な情報源からの発表をよく読み、そこで提供されるガイダンスに正確に従うことが大変重要となります。

今回提供する情報が、実際に役立つ事態とならないことを願います。化学兵器による攻撃が実際にどのように発生し、また生き残るために何ができるかを知っていただくために、市民保健センター(Центр громадського здоров’я)、ウクライナ保険省、全ウクライナ救急救命士会(Всеукраїнської спілки парамедиків)、その他人権関連の市民団体による勧告をまとめました。

化学兵器とは、その毒性によって故意に死傷させる目的で使用される有毒物質のことです。

化学兵器による攻撃の際の行動手順は、その人がどこにいるかにより異なります。屋外にいる場合は、その影響範囲を離れ、屋内の安全な場所を見つける必要があります。ゆっくりとした呼吸を保つため、素早く、しかし走らずに移動することが重要です。もし屋内にいる場合は、屋外からの空気の流入を最小限に抑えます。もし車内にいる場合は、車を道路の端に寄せ、車外の空気が流れ込むすべての換気口を塞いでください。

化学兵器の移動および使用の手段
航空機による爆撃、巡航ミサイル、その他のミサイル、地雷、魚雷、フーガス地雷、砲弾、手榴弾、発煙弾

また症状やその対処手順は、軍事用有毒物質の種類によって異なります。以下に、最もよく知られている化学兵器を紹介します(サリン、塩素、アンモニア、マスタードガス、白リン)。

サリン

サリンは人工的に作られた化学兵器で、神経系を麻痺させます。ロシアはすでに2013年のシリア攻撃の際にサリンを使用しています。

形状:

– 無色透明、無味無臭の液体
– 気化して気体となることも

人体への吸収経路:

– 呼吸器および皮膚
– サリンが付着した衣服も、サリンが気化して中毒を引き起こすため危険です。

人体への影響:

心不全を引き起こし、肺への空気の流入を妨げます。数分のうちに死に至ることもあります。

重要!サリンは空気よりも重く、下に広がるため、地面の近くかそれより低い場所(地下室、低地、下水道等)にいる人ほど中毒のリスクが高まります。

症状:

– 眼球が動く際の目の痛み、縮瞳
– 心拍数の上昇もしくは異常な低下(60未満/分)
– 呼吸困難もしくは一時的な呼吸停止
– 脱力感、頭痛
– 吐き気、嘔吐
– 鼻水、唾液分泌の増加、過度の発汗
– 方向感覚の喪失、失神
– 筋痙攣、麻痺

身を守るには

サリンは数分のうちに人体に作用するため、即座に行動します。無駄にする時間が少なければ少ないほど、中毒の危険性も減少します。

家の近くで爆発があった場合

すぐにドア、窓、換気口、その他汚染された空気が侵入しうるすべての通気口を閉じます。ガスマスクや、少なくともゴーグルがあれば、必ず着用します。

路上で爆発に遭遇した場合

すぐにその場を離れ、風上に向かって逃げましょう(ただし走らないこと)。建物の上層階、窓を閉じた車等、高いところの隠れ場所を探します。吸い込む有毒物質の量を減らすため、呼吸はゆっくりと行います。

化学兵器による攻撃から避難する場合

必ず救急箱を携行し、肌の露出がない服装にしましょう。

攻撃に遭遇した場合

– サリンで汚染された衣類を即座に脱ぎ捨ててください。
– サリンの気体が呼吸器に達するのを防ぐため、衣服は頭を通して脱がず、切り裂いて脱ぎ捨てましょう。衣服は上から下の順に脱ぎ捨てていきます。汚染された衣服はポリ袋に入れ、袋の口をしっかりと結んでください。
– 飲食をしてはいけません。
– 皮膚を水と石鹸で、目は水だけで、よく洗います。
– 汚染された可能性のあるものに触れないようにしましょう。
– サリンの中毒症状のある人が近くにいた場合、決して人工呼吸を行ってはいけません。ウクライナ国家緊急事態サービスもしくはウクライナ軍による医療支援を受けてください。

個人用防護具:

– ガスマスク
– 防塵マスク
– 目の細かい布マスク(もしくは折りたたんで重ねたガーゼの包帯)

ジアゼパム、アトロピン(治療前の応急処置として有効な解毒剤)

塩素

形状:

純粋な化学物質としての塩素は、不快で息詰まるような臭いのある緑色の気体です。

症状:

– 強い胸の痛み
– 乾いた咳
– 嘔吐
– 窒息
– 運動失調
– 流涙

身を守るには:

塩素ガス発生の際には、その場を離れ、風向きと垂直方向に逃げましょう。

重要!塩素は空気よりも重く、低い土地、地下室、トンネルなどに蓄積するので、高層ビルの上層階を利用し、汚染地域よりも上方向に逃げましょう。

今いる屋内の空間を離れられない場合:

– ドア、窓、その他外部との通気口となる場所すべてをしっかりと閉めましょう。
– 個人用防護具を身につけましょう。ガスマスク、マスク、2%の重曹の水溶液に浸したガーゼが有効です。

アンモニア

形状:

液体
刺激臭のある気体

人体への影響:

液体状態では皮膚に凍傷を与え、水疱を伴うやけどや裂傷を残すことがあります。アンモニアの吸引は、咽頭鼻部や気管の熱傷、浮腫、気道の破壊を起こします。高濃度の場合は視力を低下させ、失明につながる可能性があります。

軽症の場合の症状:

– 喉の乾燥、かゆみ、痛み、声のかすれ
– くしゃみ、咳
– 軽度の吐き気

重症の場合の症状:

– 呼吸困難、窒息
– 声門の痙攣による声の喪失
– 激しい咳
– 嘔吐
– めまい
– 発汗
– 紅潮、流涙、まぶたの腫れ

身を守るには:

アンモニア発生の際には、その場を離れ、風向きと垂直方向に逃げましょう。

重要!アンモニアは空気よりも軽いため、避難先には避難所、地下室、建物の下層階を選びましょう。

汚染地域を離れられない場合:

– 避難所、地下室、アパート(家)にとどまり、窓、ドア、換気口を、可能であればクエン酸か、酢か水の弱い溶液で濡らした布で塞ぎます。
– アパート(家)では、バスルームで、シャワーを噴霧しておくと、水が空気中のアンモニアを吸収するため、おすすめです。換気扇はきれいな空気を外に逃し、汚染された空気を室内に引き込むため、使わないようにしましょう。

塩素およびアンモニアの解毒剤はありません。

これらの化学物質に最も効果的なのは水です。有毒物質の体内からの迅速な除去及び支持療法が、この場合の治療方法となります。

マスタードガス

マスタードガスは化学兵器びらん剤の一種です。
第一次世界大戦中には毒ガス攻撃に広く使用されました。

形状:

– 気体
– 液体
– 個体

多くの場合マスタードやニンニクのような特徴的な匂いがあります。

マスタードガスは風によって非常に遠くまで届くことがあります。1〜2日に渡って残留することが可能で、気温の低い時には数週間から数か月に渡って残留することもあります。マスタードガスによる影響は蓄積的となることもあります。

症状:

– 皮膚の赤みやかゆみ、黄色の水疱
– 目の痛みや腫れ、流涙、光線過敏、重症の場合は10日間に渡る目の強い痛みもしくは失明
– 鼻水、くしゃみ、声のかすれ、息苦しさ、咳
– 腹痛、下痢、発熱、吐き気、嘔吐

身を守るには:

– マスタードガスが発生した場所を離れましょう。マスタードガスは空気よりも重いため、路上で発生した場合は、できるだけ高いところに上がりましょう。
– 汚染された衣服は、切って脱ぎ捨てます。
– 肌のガスに触れた場所を、大量の水で洗います。マスタードガスが目に入った場合も、よく洗ってください。
– マスタードガスが口に入った場合は、決して嘔吐しようとはしないでください。

白リン

白リンは弾薬の製造に利用され、煙は軍隊の動きを隠す煙幕として、また標的の特定のために利用されます。
ロシア・ウクライナ戦争中、ロシア軍が白リン弾(白リンを詰めた弾薬)を利用したことがありました。白リンは酸素と触れるだけで発火します。

形状:

– 無色もしくは黄色がかったワックス状の物質
– ニンニクのような刺激臭あり

症状:

– 重度の熱傷と皮膚の深い傷
– 骨および骨髄の損傷
– 体の組織の壊死

白リンが口に入った場合:

– 口腔内の重度の火傷
– 嘔吐、下痢、腹痛

身を守るには

– 白リンに素手で触れないでください。
– 白リンの粒が付着した衣服はできるだけ早く脱ぎ捨ててください。
– 白リンが触れて損傷した体の部分への酸素の流入を遮断してください。肌を濡らし、できれば損傷部分を水に浸け、ピンセットかその他先の尖っていない道具で白リンの粒を取り除いてください。
– 皮膚の損傷部分を重曹の水溶液もしくは冷たい水でよく洗ってください。皮膚についた白リンを落とす最も良い方法は、水でしっかりと洗い流すことです。
– 熱傷の部分を、生理食塩水に浸した包帯で覆ってください。あるいは損傷部分を水に浸すか、濡れたナフキンで覆うのでも構いません。
– 除去した白リンの粒はすべて冷たい水の容器に入れてください。こうすることで、他の人が誤って触れる危険を減らすことができます。
– 脂肪分や油分の多い軟膏は使用しないでください。
– 可能であれば、すぐに医師の診察を受けてください。

コンテンツ作成スタッフ

プロジェクト企画:

ボフダン・ロフヴィネンコ

企画:

アンナ・ヤーブルチナ

トーニャ・アンドリチューク

編集長:

イェウヘーニヤ・サポジニコヴァ

編集:

ナタリヤ・ポネディロク

コンテンツマネージャー:

カテリーナ・ユゼフィク

翻訳:

伊藤 栄一