「ウクライナに栄光あれ」だけではないウクライナのフレーズ

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ポーランドの「Za wolność naszą i waszą(あなたたちと私たちの自由に!)」、ベラルーシの「Жыве Беларусь! Жыве вечна!(ベラルーシ万歳!永遠に万歳!)」など、スローガンや非公式な標語は各国に存在しますが、いずれも国の主たる意思を端的に表現しています。ウクライナのスローガンで最も人気があるのは「Слава Україні — Героям слава(ウクライナに栄光あれ、英雄たちに栄光あれ)」で、ロシアによる侵略により特に流行しました。しかし、自由と独立を求めるウクライナの戦いを象徴する表現は他にもあります。数世紀前あるいは数十年前に生まれたスローガンかもしれませんが、これらのフレーズは全てウクライナ人の強さを示しています。私たちは自らメッセージを作り出し、それを全員で共有し、国中のあらゆる場所で耳にすることができているのです。

言語はコミュニケーションの手段であるだけでなく、状況や新しい歴史的状況に迅速かつ的確に対応する機会として、常に存在してきました。なぜなら、言語は武器でもあるからです。「Stand with Ukraine」は、国民全体の思考を形成する言葉であり、今日私たちが世界に向けて語っているものです。

「ウクライナに栄光あれ(Слава Україні / スラーヴァ・ウクライーニ)」

このフレーズの最も古い記述は、1840年にタラス・シェフチェンコの詩「オスノヴヤーネンコへ(До Основ’яненка)」に中でなされています。そして、ミコラ・コストマロウの詩「栄光の子供たち、栄光の子供たち…(Діти слави, діти слави…)」には「ウクライナよ、君に栄光あれ!(Слава тобі, Україно! / スラーヴァ トビー、ウクライーノ)」というフレーズが現れています。

「ウクライナに栄光あれ」というスローガンは、19世紀末にハルキウで生まれたもので、もともとは次のようなものでした: 「ウクライナに栄光あれ」-「国中に栄光を!」。これは、ウクライナ革命党など、ウクライナのために活動する人たちの合い言葉でした。このスローガンは、ウクライナ人民共和国時代にも使われていました。作家で市民活動家でもあったユーリ・ホルリス=ホルシキーは、小説「ホロードニー・ヤール」の中で、「こんにちは」という挨拶の代わりに、1919~1922年のホロドニー・ヤール共和国のコサックたちが「ウクライナに栄光あれ」と言って「栄光あれ、ウクライナに」と返事をしていたことを回想しています。現代の形では、このスローガンは1925年から1929年にかけてウクライナ民族主義者部隊のメンバーの間で広まり、後に彼らはウクライナ民族主義者組織(OUN)を設立しました。1941年、OUNのメンバーは「ウクライナに栄光あれ」という言葉と「英雄たちに栄光あれ」という返答を公式の挨拶として採用しました。

その後、ソ連はこのスローガンを禁止し、反体制的な表現も禁止しました。1980年代から1990年代にかけて、ハリチナ地方やザカルパッチャ地方でのウクライナ独立を求める集会や抗議行動、ウクライナ全土から集まりキーウで行われた「花崗岩タイル上の革命*」などで復活しました。当時は、このスローガンに加えて、「国民に栄光あれ!敵に死を!」「何よりもウクライナを!」という表現が加わりました。この加えられた表現は、ウクライナ国民会議(Українська національна асамблея)党の実働部隊であるウクライナ国家自衛団(Українська націоналістична самооборона)が使用しました。ソ連崩壊後、この表現は主に国家民主主義者や民族主義者によって使われるようになりました。

花崗岩タイル上の革命 / レボリューツィヤ・ナ・フラニーティ(РЕВОЛЮЦІЯ НА ГРАНІТІ)
学生たちが、花崗岩のタイルで覆われた独立広場(マイダン・ネザレージュノスチ)の上で、マットレス・寝袋・テントとともに座り込み、平和的なハンガーストライキを行ったことから、このように呼ばれている。

現在では「ウクライナに栄光あれ-英雄たちに栄光あれ」というフレーズは、オレンジ革命・尊厳の革命・ロシアによるウクライナに対する戦争と結びついています。このスローガンは、2018年からウクライナ軍と国家警察における公式な挨拶になっています。ウクライナ軍のすべての部隊において戦死した兵士の葬儀で使用されています。また、解放された捕虜たちを自国で迎える際にも、同じ言葉が使用されています。

ウクライナに栄光あれ-英雄たちに栄光あれ」は、長年にわたり独立のための戦いを象徴しており、過去と現在を繋いでいる架け橋となっています。ウクライナ未来研究所(Український Інститут Майбутнього)によって行われた2021年の社会学的研究「私たちは何者なのか:ウクライナ人の目から見たウクライナ人の姿 Part 2(Хто ми: портрет українців очима українців. Частина 2)」の結果によると、50%の人が「ウクライナに栄光あれ」というスローガンを現代ウクライナ人における信条だと考えています。

この言葉は、20世紀のホロードニー・ヤールの人々にとっても、今日ウクライナを防衛している人たちにとっても重要です。人々は今でもこの言葉を口にしてウクライナのために戦いに赴いています。特に、ウクライナ人捕虜のオレクサンドル・マツィイェウシキーがロシア軍に撃たれる前に口にした「ウクライナに栄光あれ」というスローガンが有名です。

「英雄たちは死なず(Герої не вмирають / ヘローイ・ネ・ウミラーユチ )」

この言葉は、「尊厳の革命」の時に生まれました。2014年2月21日、ウクライナにおけるヨーロッパの未来のために命を落とした天の百人たち(ネベースニャ・ソートニャ / Небесна сотня)を見送るために「英雄たちは死なず」という言葉が使われました。ヴィクトル・ヤヌコヴィッチ前大統領の罪深い政権によって殺害された抗議者たちを称えるイベントは「英雄たちは死なず」と呼ばれました。このスローガンは、ロシアによるウクライナに対する戦争で殺害されたウクライナ兵の葬儀でも使用されています。

この表現には続きがあります: 「英雄たちは死なず-敵は死ぬ。」いつ頃から登場したのか正確には不明ですが、2015年にバンド「ペールシャ・リーニヤ(Перша лінія)」の同名曲の歌詞にこのフレーズが登場します。

「自由なウクライナ万歳(Хай живе вільна Україна / ハイ・ジヴェ・ヴィーリナ・ウクライーナ)」

この言葉は、ボリシェヴィキとの戦いの中で、ウクライナの農民の間で生まれたものです。この言葉はポスターに書かれ、反乱軍のリーダーたちが演説の最後に使い、ウクライナ人が何のために戦っているのかを強調していました。

1968年、政治犯のヴァシーリ・マークフは、ウクライナのロシア化とソ連によるチェコスロヴァキア侵攻に抗議するため、キーウで焼身自殺を遂げました。彼は燃え上がりながら、首都の中心部を歩き、「植民地支配から脱却せよ!自由なウクライナ万歳」と言いました。この事件は、ヨーロッパの近代史において、民族の抑圧に対する最初の自己犠牲的行為でした。

今日、外国の指導者たちは、国民を支持する演説の最後に「自由なウクライナ万歳」というスローガンを使用しています。特に、2022年のウクライナ独立記念日に際してのポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領の挨拶では、この言葉が使われました。「自由」の代わりに「独立」や「自立」と言うこともありますが、いずれもウクライナの自由を意味する言葉です。

「我らが父バンデラ(Батько наш Бандера / バーチコ・ナーシュ・バンデーラ)」

2020年、ユーリ・フェヂコーヴィチ記念チェルニウツィー国立大学の卒業生たちが歌う「我らが父バンデラ、ウクライナは母」という歌がネット上に投稿されました。ステパン・バンデラの誕生日に合わせて披露されたこの歌は、tiktokのトレンドとなりました。歌い手たちによると、テルノーピリにあるダニロ・ハリツィキー記念聖三位一体神学センター(ウクライナ正教会)の所長アナトリー・ジンケヴィチ神父から初めて聞いたそうです。

同時に、民俗学者は、この構成がUPA(ウクライナ蜂起軍)の歌に似ていること、特にメロディーが「ああ森の中で、緑のオークの木の下で、重傷を負ったレジスタンスがいる(Ой у лісі, лісі, під дубом зеленим, там лежить повстанець тяженько ранений)」を彷彿とさせることを指摘しています。2021年、「我らの父バンデラ」はYouTubeで最も検索された曲となり、2022年には、ロシアの侵略者に対するウクライナの戦いの象徴のひとつとなりました。この曲は、後に民衆の歌となる曲が現代に創作された一つの例です。

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